実習実施者が監理団体が行う監査を受ける意義

 技能実習制度においては、監理団体は、実習実施者に対して、3カ月に1回の頻度で監査を行うことが求められています。この監査は技能実習制度の適切な運用を確保し、技能実習生の保護図る意味で重要です。

 監査を受ける実習実施者にとってみれば、「法的に必要だから仕方なく監査を受けている」「出来るなら、甘め・緩めの監査がいい」と考えがちですが、適正な監査は、実習実施者にも以下のようなメリットをもたらします。

❶労働者の確保とモチベーションの維持

 技能実習生の保護を図る体制を構築することは、技能実習生以外の一般の労働者についても、働きやすい環境を構築することに直結しますので、良質な人材の確保、モチベーションの維持を実現します。監理団体は監査を通じて、実習実施者の組織内で労働者を保護する体制の強化を支援します。

法令の遵守

 技能実習は、技能実習法に則って特別に認められた(認定を受けた)場合だけ実施可能なものです。技能実習法のみならず、入管法、労働関係諸法令の遵守が求められ、これに違反した場合には、認定計画が取り消され、事業の運営に大きな悪影響を与えます。監理団体は監査を通じて、実習実施者の組織内で法令を遵守する体制の強化を支援し、こうしたリスクから実習実施者を守ります。

❸社会的な信頼の確保

 近年、法令遵守にまつわる社会的な関心度は高まっています。また、外国人労働者に関連するトラブルは、法令違反に至らないレベルであっても、企業等の社会的な信頼を損なうこととなります。また、SNSの発達により、社会的信頼の確保と企業等の業績が直結する時代にもなっていきています。監理団体は監査を通じて、実習実施者の社会的な信頼を確保に寄与します。

 

監理団体は何を監査で何を確認すべきなのか

 技能実習制度運用要領では、監理団体が監査において確認する内容について以下のとおり定めています。

『 実習実施者に対する定期監査においては、技能実習の運用上問題が生じやすい部分を重点的に確認することが必要です。 運用上問題が生じやすい部分として、例えば、割増賃金の不払、労働時間の偽装、技能実習計画とは異なる作業への従事、実習実施者以外の事業者での作業従事、不法就労者の雇用、入国後講習期間中の業務への従事、暴力、脅迫やハラスメント等の人権侵害行為などが、過去の不正行為事例として多く認められています。~中略~監査は上記のとおり確認の上、必要な指導を行うものであり、このような確認や指導が適切に行われていない場合、十分な監査が行われているとは言えません。5章 第2節 第2(1) 監査に関するもの【留意事項】)

 このような、問題が生じやすい部分を重点的に確認するという監査をリスクベース監査といいます。